こんにちは、牛島です。
あっつい夏を乗り切って、みなさま体調などいかがでしょうか?
今日は久しぶりにQuoraでした回答をご紹介したいと思います!
Q:引きこもりが引きこもりから抜け出すきっかけは何でしょうか?
引きこもり支援をはじめて、早や11年となってしまいました。
引きこもりの方とお会いして、お話して、一番感じるのが、「心理士だからといって特に何か特別なことをしているわけではないのに、普通に話しているだけで多くの人は引きこもりから抜け出していく」ということです。
それはなぜなのか、私なりに整理したところによると、3つのポイントがあるのではないかと思います。
1.親御さんが「家族ごと社会から引きこもることをやめた」
支援機関につながるのは、親御さんが心配をして、恥をしのんで、勇気を出して支援機関にお電話をくださったからというのが一番多いです。引きこもり治療の第一人者である斉藤環先生は、「引きこもりの病理とは、家族が引きこもりの問題を隠して家族ごと社会から隔絶してしまうことである」と言っています。
親御さんがまず支援機関につながること、そして機関や相談員を信頼するチカラがおありだと、引きこもっている本人にも「まあ一度話をきいてやってもいい」と思ってもらいやすいです。
2.家庭内に「普通の会話」が増える
まだ支援機関につながっていなくても、できることはあります。それは、親子が家の中で「普通の会話」ができるようになることです。追い詰められているご家庭ほど「この先どうするつもりなの」「いつになったら外に出るの」という話題をしがちです。
そうしたヘビーな話題は親の安心と見通しのためにされることがほとんどで、物別れや傷つけあいに終わってしまうことも多いです。私と立派に社会復帰していったクライエントさんとも、そうした話題をしたことはありません。(しなくても社会復帰していけます)
外出するきっかけは、見通しや決意によってではありません。「あれが面白かった」「こんなことがあった」など、本当に日常の話を大切に、少しずつ話していったからです。人間は、そうした会話にいかに背中を支えられて生きているのか実感するところでもあります。
3.周囲が本人の感じ方と反対のことを言わない
優しい人は、本人を楽にしたい気持ちが大きいゆえに、本人の感じ方を無意識に否定してしまうことがあります。
「早く外に出なきゃって焦ってる」→「焦らなくていいよ、自分のペースでいいよ」
「こうなったのは〇〇のせいだ」→「そうだね、でも、〇〇だってあなたのことを思って言ったのかもしれないよ」「〇〇も心配しているんだよ」
「人が怖い、人と関わりたくない」→「あなたのことをみんな心配してくれてるよ。嫌な人ばかりじゃなかったんじゃない?」「世の中にはいろんな人がいるから、そういう人にも対処していかなきゃいけないよ」
などなど。この返答は、優しくて共感性が高く、そして本人に寄り添いたいと思っている人はとても言ってしまいがちですよね。それ自体はとても素晴らしいことで、個人的にはやめてほしくないなぁと思います。でも、引きこもりの方は、普通に社会に生きている私たちの何倍も傷ついてきているので、これらは言葉の刃になる可能性も心に留めておいてくださいね。
引きこもりご本人に、もしそういう話をされたのだとしたら、かける言葉は二つ、「ねぎらい」と「アイ・メッセージ」です。
「そんな思いをしてきたんだね、よく生き延びてきたね」「よく乗り切ってきたね」というねぎらい、そして、何かを伝えたいのであれば「『私は』こう思うよ」という自分を主語にしたメッセージに留めます。それがこちらのフラストレーションになることもありますが、本人の安全感のためにゆっくり練習してみてください。
私は、非常勤で引きこもり支援にたずさわっているので、相談者さん1人につき50分、月1回ほどしかお会いできません。
でも、本人の興味に興味を持って普通の会話を楽しみ、本人の感じ方を肯定しているだけで、多くの方が就労や、外出や、もう一度高校で学びなおしたりなどをされていきます。
逆に言えば、そういった安全な関わりに、いかに飢えていたのかを感じて胸が痛くなることもあります。
どうか、諦めと絶望の世界から一人でも抜け出していくことができますように。
同じように、焦りと失望のご家族が、ひとつでも日本の安全な場所になっていかれますように!
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