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執筆者の写真Saori Ushijima

複雑性PTSDであるということ

ここ最近、皇室の話題に関して「複雑性PTSD」が取りざたされています。

その診断がどうなのかというのは、ここでは扱いません。

ご本人のつらさは、診断が重いから重いものであるのではないからです。

早く、環境が整ってゆっくり元気になっていただきたいですね。


さて、私が取り上げたいのは、にわかに「複雑性PTSD」が注目されるようになったことです。

今まで、事件や事故、災害によるPTSDは何かが起こるたびに人々に注目され、ケアされてきましたが、複雑性PTSDに関して注目が集まることはなく、そして複雑性‘PTSDの当人ですら、その病気がどのようなものであるか全貌がつかめないことが多かったからです。

複雑性PTSDの人は、「これは病気か?症状なのか?甘えなのか?」と考えてしまうことが多く、その生育過程から普通と異常の区別がつきにくく、症状があっても我慢してしまうことが多かったからです。


でも、いろいろなところに我慢のほころびや、ストレス、他人や未来への恐怖はつきまとい、その様相が他者から「人格障害」と言われたり、そこまでいかなくても「わがまま」とか、「かまってちゃん」とか「ヤンデレ」と言われ、揶揄されてきたからです。


複雑性PTSDは、長期の虐待や拷問による、立派なストレス障害であり、自尊心を根こそぎ奪われた人の、それでも生きるための努力の症状です。


複雑性PTSDの特徴はは以下に記しました。ちょっと難しい文章ですが、誤解のないようにそのまま載せてあります。「私はちがうかな?」と思っても、あてはまる項目があれば、十分癒され、ケアされる資格があります。




〇身体的、心理的、性的、教育的虐待、ネグレクト、配偶者暴力の既往を持つ子ども、成人の次の症状


1.気分変動:子供の場合にはかんしゃくの頻発、成人女性の場合は月経前の制御困難なイライラを含む

2.記憶の断裂:1日以内の食事内容を想起できない、記憶の断片化の常在

3.時間感覚の混乱:日内リズムの慢性的混乱。眠気の消失を含む。

4.フラッシュバックの常在化

5.生理的症状と心理的症状が相互に区別ができない、その結果として生じる慢性疼痛(ずっと体のどこかが痛い)

6.希死念慮:他者への恒常的不信、事象、その一方で非現実的な救済願望これは対人的に限らない。

(発達性トラウマ障害と複雑性PTSDの治療:杉山登志郎 2019)


いつも気分が乱れ、記憶は飛び飛び、生活リズムもどうしても整わず、嫌な記憶がフラッシュバックし、いつも頭痛がするけれどもなぜかわからず、人が怖い、死にたい、誰かに助けてほしい、なんでもいいから助けてほしい。そんな日々です。


この診断名があるということは、そういった状態の人がいるということ。

そして、この症状はすぐには良くならず、そして薬物療法だけではよくなりにくいです。

日本ではこの複雑性PTSDの治療がとても遅れていて、ドクターも心理士も、少ない資料や研修の中で手探りでやっていっている状態であることも多いと思います。


私は、14年前、児童相談所で働き始めてから、ずっとこの複雑性PTSDに注目し、勉強してきました。

そして、身体のセラピーや、トラウマケアを中心に、たくさんの患者さんと出会ってきました。


ストレスを受けた脳と身体は、危険だらけと認識した世界で、あやういバランスの中で、どうにかしようともがきながら生きている。それが、複雑性PTSDという症状です。


死にたいと思ったり、ジェットコースターのような気分の浮き沈みは、一度心療内科のお医者さんに行かれることを強くお勧めします。でも、実生活は何とか送れているけれど、もっと大きな人生の悩みを抱えている方は、ぜひセラピーを受けられるといいかもしれません。


「人はパンのみにて生きるにあらず」です。

息をして、仕事をして、寝ているだけで、それはとてもすごいことです。でもそれだけで満足しておけ、なんて世間は思ってもいないし、あなたも思っていてはいけない。

もっともっと、満ち足りた気分や、おだやかな午後や、安心できる場所を経験してもいいはずです。それを、一緒に探していきましょうね。



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